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書評: 新 企業の研究者を目指す皆さんへ

もともと自分が学生だった頃に読んだ本の新版. 当時はまだ企業における研究とは何か理解しておらず,その後の自分の企業研究者人生に大きな影響を与えてくれた. その新版が出たということで読んでみた.

企業の研究者を目指す人という書き方ではあるが, 企業の研究者ではなくなった今の自分でも読んでよかったと思えた.

概要

企業の研究者や,研究者を目指す学生に向けて著者のキャリアの中で感じた 企業において必要なこと,研究者において必要なことなどを記載している. 著者はソフトウェアに関する研究者ではあるが,分野に依存しない 一般的な研究者へのメッセージ・考え方を示している.

新版での追加内容として,旧版が出版されてからの著者のキャリアとして 数理研やPFNなどの経験を踏まえた内容となっている. 旧版のIBMにおける研究に対する考え方を知る本という立ち位置から, 企業という枠を超えて研究者とは何かについて知ることができる.

よかったところ

新版で追加された内容では,2章におけるソリューションを設計するが深く刺さった. 設計型の研究を上手く成果に結び付けることが難しいことは,自分も多く経験しており, 論文にすることの難しさや,成果としての評価の難しさを今でこそ理解している. さらっと書かれており,学生が読むとしたらスルーされるだろうけれど, もっと早く出会えていたら自分の悩みにもっと向き合えていたかもと思う.

旧版からあった内容で,改めて深く考えたのが6章のインテグリティについてである. もちろん,研究成果の捏造といった重大な事件はやっていないし,実際に見たことはなかったけど, 進捗のごまかしという点では大なり小なり見てきたし手を出してしまったこともある. あとはやるだけだからとか,ここのバグを直せば完了だからと,成果をごまかして報告したり, 逆に毎週良い成果を報告したいから,まだ今週は上手くいっていないことにして次週に報告しよう, といって報告しなかったりという場面に多々出会ってきた. これはコミュニケーションの問題でもあるが,社内だからこそ包み隠さず報告することが大切だし, 過剰にアピールせず等身大に伝える,ということの大切さと難しさを再度考えてしまった.

よくなかったところ

特に疑問に思ったところはなく,基本的に非常に満足できる内容だった.

あえて言うのであれば企業という視点が軽くなったように感じた. タイトルの「企業の」ということが本質ではなく,アカデミックの研究者を目指す人にも読んで欲しい内容だと思った. 「企業の研究者」と述べているからにはもっと企業特有の話を記載して欲しいとも感じた. 例えば2章の研究の出口はまさに企業とアカデミックで大きく異なるところだと思っているので, もう少し掘り下げて欲しかった(技術移転はそれだけで1冊本になりそうなほど難しいトピックだと思う).

まとめ

企業で研究するならぜひとも一度は読んで欲しい本だと思うし, 研究でなく開発よりでも非常に参考になる. 自分も読んでいてまた研究したいなと思ってしまった.

新 企業の研究者をめざす皆さんへ

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